久しぶりの投資本のレビューです。
投資本と言えば、バリュー投資、成長株投資等の投資法について述べている本が多数なのですが、
市場が不安定な今こそ
「市場とはどういう性質を持っているのか?」
という根本的な問いに答えを出してくれそうな本を読もうと思い、「市場は物理法則で動く―経済学は物理学によってどう生まれ変わるのか?」を読みました。

全体的な論調としては
・均衡
・合理的経済人
という2つを前提として置いている古典経済学派を実証的かつ論理的に論破している本です。
私も上記前提はかなり無理があり、経済学という学問の根本的信頼性を揺るがしていると考えていましたが、この本ではそこのところがきっちり攻撃されていて痛快でした。


また、従来の金融工学に対しても痛烈です。私なりに著者の主張を要約すると以下の通りです。
「難しそうな数学使ってるけど、結局は正規分布と合理的選択を行う1個人しか前提に置いてない一つのモデルしか構築できてない。現実では全く役に立たない」
これはその通りだと思います。
著者はこれ以外にも、効率的市場仮説、従来のGDP予測モデルにも批判を行っています。

もちろん批判ばかりではなく、タイトルにある通り物理学の考え方を用いた実証研究、シミュレーション結果も豊富に示されています。
「均衡」という概念に対して「動的モデル」を、「合理的経済人」という概念に対しては、「状況に応じて対応を変化させる人間」を示してシミュレーションを行っています。
これらが非常に示唆に富んでいます。
私なりにこの本で役立ったと思った実証研究結果、シミュレーション結果は以下の通り

・市場参加者が増え、市場参加者の取る戦略が似通ってくると見た目のボラティリティは小さくなるが、市場の不安定性は増す
・市場は弱い予測可能性を持ったフェーズと、まったく予測不能なフェーズに大別される
・金融ネットワークが発達すると、金融システムは脆弱になる(政策提言を行っている経済学者とは真逆の結果)

私のブログ記事だけでは理解しにくいと思いますので、市場への理解を深めたいと思っている方はぜひ本書を読んでいただきたいと思います。
マイナーな出版社から出ている本なので高いのが不満点の一つですが、実用書ならこんなもんでしょう。